備忘録

書きたいことや思ったことの殴り書き。

オランダ9部所属のチームの試合が最高だった。

「明日引き分け以上で優勝が決まる試合があるので、ぜひ見に来ませんか?」

というメッセージを住んでいる町の知り合いからもらった。エールディヴィジでも、エールステディヴィジでもない。地元にあったトップクラブは30年前に消滅している。

調べたらどうやら9部のチームらしい。その日元々入っていた予定が運良く?飛んだので、もうこれは行くしかない、ということで行くことにした。

 

にしても、サッカーの話は一般人にすると引かれそうな話が多いので普段はあまりしないように心掛けているのだけれど、どこで9部の試合を見にきそうな酔狂な奴だと判断されたのかは少し気になる。アルバニアリーグ見に行ったら武器持った覆面男に追いかけられた話のせいか?まあ、高校時代に自分の高校(8部所属)の応援をしにほぼ毎週のように横断幕と太鼓をもって通っていた人間なので、誘う人間として大正解だとは思う。

 

アウェイゲームとのことだったので、10-15キロ離れた隣町までバスで向かう。20分ほどバスに揺られた後バス停を降り、スタジアム(というかグラウンド)がある公園を目指す。

 

公園の中に、それなりに立派なゲートと収容人数1000人程度の立派なサッカー専用競技場が見えた。「なるほどここで試合するのか」と思ったのもつかの間、ピッチにはおそらく相手と思われるチームのユニフォームを着ている選手のみが普通の練習をしている。どうやらここではないらしい。

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立派なスタジアムを横目に、席のないグラウンドに歩いていく。ユースや高校など、2種の応援をしていた日々を思い出す。

着いた瞬間、来て正解だったことを確信する。ピッチでアップをする選手たちと、ピッチ際に群がる数十人の観客、そして選手たちの横でボールを蹴っているちびっ子たち。自分が見たかった情景がそのまま広がっている。

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観客は選手関係者と思われる若い女性や家族連れ、そしておそらくただただ応援している酔狂なおっさんたち。若い女性は選手の彼女かと思ったけど、どうやら女子チームの選手たちらしい。あとでチームの公式サイトを見たら、女子チームの選手たちのプロフィール写真がマッチングアプリに出てきそうな写真ばかりですこし面白かった。

 

 

そして、この辺りで「どうやらこの試合は9部の試合というわけでもないらしい」ということが分かった。

このチームが所属するのが4e klasseというリーグ。これはアマチュアリーグで数えて4番目(正確には違うっぽいけどそういうことにしておく)のリーグで、その上にエールディヴィジのようにDivisie(ディヴィジョン)で数えられるリーグが5部まである。ということで、5+4=9部。

なのだけれど、今日に来た試合はこのチームのBチームで、所属は6e klasseらしい。つまり、11部。

11部の試合に関係者含んでいるとはいえ、この量の人が来ているという事実がもう最高だった。試合前にはいっちょまえに発煙筒を焚き、おっさんたちは肩車をしてゴール裏のネットに横断幕を張り付けている。

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よくよく観察してみると、ベンチに座っている子供もいるし、だいぶ自由だ。

試合が始まる。特に応援をするでもなく、みんな試合を見ながら雑談をしている。サッカーという口実をもとに集まって交流しているような感じだ。

相手チームの選手が裏のスペースに抜けたところ、副審が旗を上げる。が、主審は明らかに気付いているのに流す。そんなことあるか?と思ったところ手前の副審は自チームのユニフォームを着ていた。仮にも公式戦なのに、優勝が決まる試合なのに、そんな自由でいいの???となった。次から次へと「え、そんなのアリなの!」というびっくりが出てくるさまはカメルーンに着いてからの1週間に匹敵する。

観客もとにかく自由だ。選手が小競り合いを始めたらそこに混ざりに行く血の気の多いやつもいる。

 

そしてよく見ると選手交代もかなり頻繁に行われている。どうやらフットサルのように入ったり下がったりが認められているらしい。いや、この感じだと認められているのかどうかはわからないけれど、とにかくそれが行われている。交代した選手はベンチに戻るもよし、ピッチ際の観客と世間話をするもよし、という感じだ。選手のレベルも玉石混合(もちろんうまい人もいる)で、足元は上手いけどハイボールの処理などでバタつくおじさんたちが頑張っているさまは見ていて非常に気持ちがいい。

 

前半はスコアレスドローでハーフタイムに。人の流れについていくと、相手チームのクラブハウスのようなところに行きついた。中にはファン向けのバーがあり、平日夜とてちゃんと営業している。ちょうどのどが渇いていたのでコーラを頼んで飲みながら、ローカルフットボールの雰囲気に浸る。

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どうやらさっき専用競技場で練習していたのはトップチームらしく、トップチームは上から数えて6部所属らしい。6部というといささか下のように感じるかもしれないけれど、アマチュアのなかではそこそこ上のほう。そして、強さに関わらず、複数のグラウンドと専用競技場、自前のクラブハウスを持っているチームのトップチームなわけだから、やっぱり華はある。聞いたところによるとこのチームはなんとレベル別に11チームも持っているとのこと。一番下のレベルがどんなもんかはわからないけれど、でも自分でも入れるんじゃないか?という気がしてくる。サッカーがうまいわけでもないけどやりたい、という人たちの受け皿が存在して、しかも街のトップチームと同じエンブレムを付けられるというのはものすごくいいな、と思う。

 

ハーフタイムにピッチで遊んでいた子どもたちがピッチ際に戻ってきて、入れ替わりに選手がピッチに入り後半が始まる。後半始まって早々、自チームが先制。世間話をしていた観客もどっと沸き、ピッチになだれ込み、そしてそれを止めるものは誰もいない。発煙筒がさらに焚かれ、打ち上げ花火が打ち上げられる。

 

試合は後半終了間際に2点目を決め、1点を返されるものの2-1で終了、優勝が決まった。優勝が決まると同時に、選手は抱き合って喜び、ファンと共に発煙筒を振り回して喜びを分かち合う。クイーンのWe Are The Championsが流れ出し、これも多分自チーム側が持ってきたスピーカーで流しているという感じだけれど、それでも優勝の雰囲気は十二分に伝わってくる。

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オランダはサッカーが国技だし、もちろん強豪。プロリーグも盛り上がっている。その一方で、ビッグクラブ以外のユニフォームを着た人なんてめったに見ないし、どこかのクラブのチームのファンというひともそこまで頻繁に見ない。この辺りが、欧州のサッカー文化を観察していて引っかかっていた部分で、どこに行ってもどんな人でも好きなクラブを持っていてそれを常日頃から表現しているブラジルとは対照的だと思っていた。でも実際にこういった下部リーグのサッカーを見て、なんかモヤモヤがとれたというか、普段はなかなか見えづらい土台の部分が見えて霧が晴れたような感覚になった。ぶっちゃけアヤックスの試合よりも楽しかったように感じる。

 

やっぱりサッカーの面白さはピッチ内のレベルだけじゃあないよなってことを改めて実感できて最高だった。そんな11部リーグ優勝決定戦のお話でした。