備忘録

書きたいことや思ったことの殴り書き。

アフリカ旅行記-エスワティニ

居候させてもらっていた友達が一時的に家を空けるとのことなので、それに合わせて自分もちょっとだけ旅行に出よう、と思った。住んでいるわけでもないマプトに居ながら「旅行に出よう」という気持ちが出てくるくらいにはマプトでの毎日は日常生活、といった感じだ。

地図を見てみると、エスワティニが近い。単純計算で2時間ほどで行けそうだし、この国に入るのにビザも必要ない。幸い今持っているモザンビークのビザもダブルエントリーで、エスワティニからモザンビークに再入国が可能なので、気軽に行って帰ってこれそう。

 

ということでエスワティニへと向かう。エスワティニといえば絶対王政の国で、王様がヤバいという話くらいしか印象がない。観光地も調べたけれど、「ここに行かねば!」といった場所もなさそうなので、あまり期待はせずに行く。まあでも2-3日の小旅行なので、それくらいの場所のほうがちょうどいいかもしれない。

ネットで調べた情報を頼りに、マプトの西側にあるJUNTAというバスターミナルをシャパで目指す。マプトのシャパは時刻表こそないものの、しっかりとした路線図があるから乗りやすい。

30分ほどしてバスターミナルに着き、エスワティニ最大の都市であるマンジニへ行くシャパを探そうとしているところ、警察に呼び止められる。もうここからは以下略でいい気もするけれど、数人に囲まれてにやにやされながら荷物チェックをされた。これだけで本当に1日のテンションが下がる。

シャパを探すと、マンジニ行きはコチラ、と書かれた看板はあるもののバスはない。そこでうろうろしていると、モザンビーク人に「マンジニ行きはないから、ナマーシャという国境沿いの町まで行ってそこからまたシャパを捕まえるのがいいよ」と教えてもらった。

モザンビークの通貨メティカルの一部を南アフリカランドに替え(エスワティニではランドが使える)、シャパに乗り込む。130メティカル(260円)。モザンビークの長距離シャパがすし詰めになるのは目に見えていたので、助手席に座る。助手席は最大でも3人なので楽。

2時間ほどして森の中にある小さな集落で降ろされる。ナマーシャという村のはずれ、エスワティニとモザンビークの国境だ。モザンビーク側の出国審査。ポルトガル語で矢継ぎ早に質問される。「英語は喋れるか」と聞くと「シャンガナ語なら喋れる。シャンガナ語で質問するか?」と言われて「んなもん無理だわ」となったので、渋々ポルトガル語で応対。エスワティニから来る人はポルトガル語は喋れないだろうに、せめて英語くらいは喋れてほしい。とはいえ色々な質問をされた以外は問題なく出国審査が完了。検問所を出てエスワティニ側に向かって歩いていくと、モザンビーク警察に呼び止められた。以下略。最後の最後までこの国の警察はくそだ。

 

エスワティニ側。コロナのワクチン証明書をチェックされた後、特に質問されることもなくスタンプを押される。びっくりするくらいシンプルだ。そしてその後に全員が受ける荷物チェックのようなものはあったけれど、これも簡易的なチェックで終了。国境一つまたいだだけでこうも違うか、と思ってしまう。

エスワティニ側の土地名はロマハシャ。ここも集落といったレベルだけれど、幸いATMはあったのでいくらか現金を下ろして、ローカルの食堂で昼食を食べる。カレーのような味付けのチキン・ご飯・千切りキャベツのコールスロー。無難に美味しい。

外は霧雨が降っていて結構寒い。この辺は森に囲まれているのだけれど、高地なのもあってあまりアフリカの森、といった感じではない。そんな視覚的な情報のおかげもあって、余計に寒い。

さすがに陸路で来る旅行者、それもアジア人は珍しいのか、声をたくさんかけられるが、色々質問をされるだけでからかいとかは一切ない。そしてみんな「スワジ人は親切で平和的だからここは良いところだ」と言ってくる。実際これは本当だなと思うくらい、今のところは好印象。

そういえば、この国の旧称はスワジランド。スワジ人の土地、という意味だったのだけれど、「土地って単語が英語なのおかしくね?」ということで、スワジ語での呼称であるエスワティニに改められたそう。JapanがNipponになるようなものなのかな。でもみんな呼称に慣れてないのか、スワジ人自身も「スワジランド」という人がかなり多い。

 

昼食を食べた後、マンジニへ行くミニバスに乗り込む。ミニバスは他の国同様ハイエースなのだけれど、かなり新しめだし、椅子も新車の椅子。サンバイザーには日本語ではなく英語が書いてあるので、日本からの中古車でもないらしい。となるとおそらく南アからの輸出だ。通貨が相互互換だったり、南アとの繋がりが強いことによる恩恵が見て取れる。車内はガラガラで出発までまだまだかかりそうかなー、と思っていると、乗車率が4割ほどで出発した!こんなことは今まであり得なかったのでうれしい驚きだ。

バスの中から外の景色を眺める。山が多いところを走っているときはヨーロッパを思い出すし、平地に広がる農地とたまに見えるポプラの木はもうものすごくオランダっぽい。天気の悪さも相まって非常にオランダ。留学先に帰ってきたような気分になる。

30分ほどしてバスが検問所のようなところで止められる。どうやら全員の荷物をチェックされるらしい。が、ここでも荷物を全て出せ、といった感じは全くなく、ある程度チェックをしたら「オッケー」と言われて終了だった。モザンビーク警察との歴然とした違いに驚きチップをあげたくなるくらい。

舗装された道をしばらく行くと、途中からなんと中央分離帯のある高速道路になった。これも南アフリカの恩恵かもしれないけれど、とにかくこの小国の発展ぶりには驚く。

午後4時。ロマハシャから2時間ほど、エスワティニ最大の都市であるマンジニに着く。最大といっても、大都会というわけでは全くない。あくまでもエスワティニという小国においての最大都市、といった規模だ。バスターミナルはそれなりにごちゃごちゃしているが、少し離れるとかなり綺麗なケンタッキーの店舗とショッピングモールが見えた。格子状の道路にケンタッキーと綺麗なショッピングモール、そしてビルがないが故の広い空という光景は、今までの国で見てきた光景とは少し異なる。そして何故かは形容しがたいのだけれど漠然と「あ、この町好きだ」と感じる。

宿もなければネットも開通していないので、最寄りの携帯ショップでsimカードを契約し、宿を探す。が、ネット上で調べた宿はどれも高い。もう少し安宿があるのではないかと踏んで、近くの旅行代理店に入って(別にマンジニの宿を扱っているわけではないが)、「この辺の安宿を知らない?」と聞く。すると、受付に座っていたおばちゃんが「うーん、宿は何個か知ってるけど正確な値段は分からないね。ちょうど今退勤して車で帰るから、ついでに宿まで送ってあげようか?」と。おばちゃんの子供も学校帰りで一緒だったし、直感的に「この人は危なくない」と思ったので車に乗せてもらう。

5分ほどで着いた宿が許容範囲内の安さだったので、おばちゃんにお礼を言うと、「何かあったら電話してね、現地の人の連絡先知ってた方が安心でしょ」と電話番号を渡してくれた。何から何まで親切すぎるこの国。しつこすぎたりするわけもなく、旅行客だからとお金を要求するでもなく。旅行客が珍しいからか声をかけられたり凝視されたりはするが、からかいとかも殆どない。

宿にチェックインをして、夕食を食べに行く。が、どうやらローカル食堂的なのはあまりなさそうなので、ホテルの向かいにあるインド系のレストランでカレーを食べて一日を締める。

 

翌日。まずはスワジキャンドルというエスワティニの名産である蝋燭が売っているところに行ってみる。日本だとスワジキャンドルという名称で通っているけれど、どうやらスワジキャンドルを売っているお店もある、工芸店や職人が集まっている場所、と言った方が正確らしい。なのでキャンドル以外にもエスワティニ国内で作られた様々なお土産が売ってて、みていて飽きない。お土産はあまり買わない性分なのだけれど、ありきたりではない、その地の人が手作業で作っていたり何かしらのメッセージが見えるものはついつい手に取りたくなってしまう。

 

自分用のお土産を買った後、マンテンガという場所に向かうべくバス乗り場に向かう。とにもかくにも、どこを切り取っても画になる風景を撮りたくてカメラを首から下げていると、昼間から飲み会をしてた6-7人の若者に「写真を撮ってくれ!」と言われる。人の写真を撮るのが好きな一方で見知らぬ人を撮ることに抵抗があるので、「撮って欲しい」と言われるのはありがたい。が、今までにも撮った後に金をせびられたことがあったので、少し警戒。何枚か写真を撮った後、メッセージアプリで写真を送ってあげようとすると「ハウマッチ?」と言われる。「あー今回もお金せびられるパターンか」と思いお茶を濁していると、「いくら払えばいい?ワイン飲む?今ワインしかないから、もし他の飲み物飲みたかったらこれで買って」とむしろお金を渡された。まさかお金をもらう側の話だとは思ってもいなかったので、困惑してしまった。お金をもらうのは気が引けたので断って、気持ちだけ受け取っておく。しかしこの国の人柄は今までのアフリカの国々とはだいぶ異なる気がする。

 

ミニバスに乗り、マンテンガへ。マンテンガではエスワティニの伝統舞踊を観れる文化センターへ。マンテンガで降りてから3キロくらい登山をした先に文化センターはあった。エスワティニに来てから薄々思っていたのだけれど、エスワティニ観光は車があった方が断然楽だ。ここに来て紛失のリスクを考えて免許を持ってこないという決断が仇となるとは思ってもなかった。

文化センターでは、スワジ人の伝統的な生活様式を説明してもらった後、近くの滝へのトレッキング、そして最後に伝統舞踊といった流れ。生演奏に合わせて踊る伝統舞踊はなかなかに迫力がありそれ自身も良かったのだけど、それと同じくらい彼らのダンスに合わせてノリノリで踊る修学旅行で来た学生たちも良かった。演者にお構いなしで踊り、前に出て一緒に踊ったり指笛を鳴らしたり。国によっちゃあ顰蹙を買いかねないけれど、ビートに合わせて心の底から全身で踊りを楽しむアフリカのこの感じが大好きなんだよな。自分も幸せな気分になれる。

ダンスが終わって、いい気分で来た道を歩いて帰ってると、後ろから来た修学旅行生が乗ったバスにクラクションを鳴らされる。邪魔なのかと思って避けると、「乗れ!」というジェスチャーをされる。帰りも3キロ歩くのか〜と思ってたところだったので今回も言葉に甘えてメインロードまで乗せてもらう。いやはやスワジ人は本当に優しい。観光資源的には乏しいかもしれないけれど、それ故なのか観光客に対しても優しいし、その結果としてものすごく好きな国になった。

 

三日目。マンジニを出て南アのムボンベラに行くか、首都のムババネに寄ってからマプトに帰るか。南アに行くにせよムババネは通るので、とりあえずムババネに向かってみる。エスワティニの首都、ムババネはエスワティニ西部の南アとの国境近くにある都市。マンジニからはミニバスで40分ほどで着く。ここには行政的な機能が集まっていると言った感じで、マンジニと比べると新しめの建物が多い。山岳地帯に作られた都市ということもあって、パッと見たらスイスとかスロベニアあたりの小都市のように見えてしまう。

ミニバスを降りると、早速バイクや他のミニバスの運転手が寄ってきて、「どこに行くんだ」と聞かれる。「今着いて、ムババネ散歩する予定だから何も乗らないよ」と伝えると「そうか、スワジランドを楽しんで!」と言われサッと人が引いていく。このアッサリさはアフリカの他の国にも見習って欲しいくらいだ。

ムババネには何か特別なものがあるわけではないが、強いて言うならアフリカ唯一の台湾領事館がある。入れるわけでもないし外から眺められるだけだけど、せっかく来たので眺めるだけ眺めてきた。

で、まあ1時間も歩けばやることも無くなるので、次どうするかを考える。ムボンベラに行こうと思ってはみたもののどうやら交通手段が限られていそうなこと、今からマプトに戻れば夜前には着けそうな感じだったので、マプトに帰ることにした。短い滞在だったけれどエスワティニを好きになるには十分な時間だったように思う。平和で人柄が良くて自然が豊かな小国。同じく南アに接するレソトは「南アのスイス」なんて言われるけれど、エスワティニも同じくらい評価されたっていいと思う。でもそんなエスワティニも問題が全くないかと言われるとそういうわけでもなく、エイズの感染率の高さはアフリカ随一らしい。それ故か公衆トイレには避妊具が置いてあった。なんとイミグレのトイレにすら。また絶対王政ということもあって、やはり国としての脆さはあるんじゃないかなとは思う。まあそんなエスワティニだけれど、好きな国なのでいい方向に発展していって欲しいなと思う。