サッカーを点で見るか、線で見るか。「ファン・サポーター」と呼ばれる人の多くは一つのチームを中心としてサッカーを線で見ていると思う。自分もその一人。線で見ることでどんな試合にも意味が生まれてくるし、その意味は物語を追い続けないと見れないものでもある。
サッカーをエンタメとして語るのは抵抗があるけれど、20年近く見続けても飽きないなんて、最高のエンタメだと思ってる。長編ドラマに例えるとして、週に1回のエピソードを見るのに数千円払って、ドラマのファングッズを買うために年間数万円払うなんて、そうそうあることではない。
一方でサッカーを点で見るというのは、すなわち1試合だけを切り取って見ること。自分も他のチームの試合や他のスポーツの試合をたまに見たりするときは(たまに線が繋がることはあれど)基本的には点として見ている気がする。
点として見る場合に重視すべき点は、シンプルに試合の面白さだったり、(自分はあまり重視していないけれど)試合環境の快適さ、サイドイベントの充実さ、などが挙げられる。
ここ数年のFC東京を見ていると、国立での花火、無関係なアイドルのライブ、スタジアムグルメの充実など、ライト層へのアプローチ、つまり点で観る客を増やす努力が目立っていたと思う。ネガティブな書き方になったのは、サッカーに対する投資がそれに対して見合ってないように思えたから。ドラマの本筋がイマイチで、エキストラに大物アイドルが起用されてもときめかない、みたいな(例が正しいかはおいておいて)。
そんな過去数シーズンがありつつ、今年は、サッカーが楽しい。負けても次の試合がワクワクするようなシーズンは久しぶりだし、生え抜きで海外へ飛び立った橋本拳人も帰還した。これらを楽しめるのは、線で見ている特権だと思う。線で見ればこのように相対的な出来で面白さを評価出来るけど、点で見るとなると絶対値的な面白さや満足度を以て評価されるわけで、究極的には勝ち続けるしかなくなる。勝ち続ける強いチームを作ったとしても、雨が降れば集客力は落ちる。点で見る客をコンスタントに獲得し続ける戦略は、多くの場合それなりのリスクがあるように思う。
スタジアムにおける体験を充実させることで、点で見る客を増やすことは手っ取り早いし、そこがイケてないかつ現体制における得意分野と判断したからこそ、まずはそこに注力したのかなと自分は思っている。まあ合理的だ。サッカーの部分についても、アルベルを招聘した初年度はそれなりに野心的なビジョンを持っていたように思うけれど、派手に躓いた結果全体における優先順位が下がったように思う。アルベルに我慢強く任せるシナリオもあったかもしれないが(自分は絶対noだけど)、「産みの苦しみ」は点で見る客を増やす、という戦略と相反することもある。
点で見る客を、どのように線で見る方にシフトさせていくか。そもそもそんなシフトなんて無理なら話で、点で見る客と、線で見る客の性質には埋まらない差があって、線で見る客を増やすには別の施策が必要かもしれない。線で見る客を増やす、ということを計画的に行うのは難しいだろうなと思うし、自分もこうすればいいんじゃないか、というのは分からない。
けど、上に書いた通り、今年のサッカーは面白い。まだまだ途上だけど、「ここからもっと面白くなっていくんじゃないか、強くなるんじゃないか」という可能性をひしひしと感じる。0-2の試合だろうと、0-0の試合だろうと、ポジティブな声が溢れているのは良いことだと思うし、自分を含め線で見ている人たちは結果に関わらず楽しんでいるように思う。線で見る人が増えれば、天候が悪かろうとなんだろうと、人はある程度増えるんじゃないかと思う。新しく線で見始める人がどうしたら増えるのか、は分からないけど、少なくとも「FC東京はちょくちょく追ってるけど毎試合無理してでも見に行くほどではないかな」「最近スタジアムから足が遠のいている」といった「線がだんだん薄くなっている層」はそれなりにいるだろうし、そういう層には「FC東京が面白いサッカーをしている」ということは、再びしっかりとした線を引いて見るきっかけになりうると思っている。
俵積田がゴールを量産するようになったり、マルセロヒアンが無双したり、新たなスターが出てくるかもしれないし、今年は希望に溢れているシーズンだと思う。シーズンが終わる頃には天候が悪い試合でもたくさんの人がスタジアムに来るようなチームになっていますよう。