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東欧旅行記#2「サラエボ~モスタル・ピザ屋の思い出」

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kerompa-tokyo.hatenablog.com

 

1220日、朝5時半。アラームで目が覚める。まだ寝ていたい所だが、モスタル行きの電車は朝7時なので朝6時には宿を出たい。重たい体を起こして準備をする。

鉄道駅は昨日降りたバスターミナルの隣で、トラムまたは徒歩だ。早朝でトラムがあるか分からなかったが、トラムの発着所に行くと朝6時なのにもかかわらず多くの人が待っていた。

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サラエボ旧市街。

 

街はまだ暗い。サラエボは谷にある川沿いに発展した町で、周りは山に囲まれている。山の斜面に出来た家の灯りがとても綺麗だった。トラムに乗り鉄道駅に向かう。途中でトルコ人に声をかけられた。彼も同じ電車でモスタルに向かう観光客だった。

鉄道駅のカウンターでチケットを買う。111マルク(700円ほど)マスターカードのマークがあったのにカードが使えず、少ないマルク紙幣を消費することに。

駅のカフェでコーヒーを飲んだ後、モスタル行きの電車に乗り込む。電車は思ったより近代的で、コンセントもついていた。

 

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サラエボの駅舎。まだ薄暗い。

 

時間通りに出発して、電車は南へ。朝の天気は曇りで、霧もかかっている。数日前に雪が降ったこともあって、あたりはかなりの雪景色だ。

サラエボから少し出ると、コンクリでできた普通の一軒家がまばらに建っていて、いわゆる旧ユーゴ的な団地は姿を消している。山に生えている木や平地の畑なども相まって、家に煙突がなければ完全に新潟あたりの冬の田園風景だ。

 

徐々に太陽が上がってきて明るくなってくる。そうすると、霧が低地に滞留して、雲海のようになっているのが車窓から見えた。今まで見た車窓からの景色で一番綺麗だったかもしれない。

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車窓からの幻想的な風景

 

しばらくすると途中にある都市に入る。都市に入るや否や、新潟っぽさは一切影を潜めて、急に旧ユーゴっぽい無機質な団地、それもほぼ廃墟のような団地が広がる。この景色のコントラストを見れただけでも十分満足した。

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が、それだけでは終わらない。モスタルに近づくにつれて、鉄道は川沿いを走るようになる。東欧、特にこのあたりの川はミネラルの関係なのか真っ青な川が多い。真っ青な川、その先に高い山、そして完全に晴れた青空。とにかく絶景というほかない景色を堪能して、寝るつもりだったサラエボ-モスタル間はあっという間に過ぎていった。

 

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モスタルも人生で2回目だ。こっちの方がサラエボより記憶にある。

とりあえず朝から何も食べていないので、適当にやっているお店に入ってピタという餃子の派生版のようなものを食べる。3マルク。

それを食べたのち、モスタルの観光をして、モスタル郊外にあるブラガイという滝で有名な町に行く。

ブラガイまではバスで30分ほど。バス停がどこにあるかいまいち分からないが、記憶を頼りにバス停を探す。しばらく待っていると、ブラガイを通るバスがやってきたので乗り込む。バスに乗っていると、"Hey!"と声をかけられる。よく見ると朝サラエボで一緒になったトルコ人だった。彼らもブラガイに行くらしい。

前回ブラガイに来た時は、なんだか滝までやたら歩いた気がする。でも理由が思い出せない。

しばらく乗ってると、バスが何にもないところで止まって、"Blagaj, Here!!"と運転手に言われる。ここで合点がいく。ブラガイに行くバス、と言ってもブラガイの滝まで行くバスはほとんどないので、基本的には歩かないといけないのである。

ということでそこから1-2キロ歩いて滝に行く。閑散期ということもあるのだろうけど、それにしてもお土産屋の殆どが閉まっていて、メインアクティビティの洞窟の中に入るボートすら運行していなかったのは軽くショックだった。コロナ禍で観光業もかなりの影響を受けているのだろう。その多くがEU圏からだったのだと思うが、シェンゲン協定外のボスニアにこの時期に行こうとする人は流石に少ない。

景色がこれだけ綺麗なのに、これだけしか人がいなくてガランとしている。自分からしたら人が少ないのはストレスもないし楽だけど、観光業に頼ってる人のことを考えるとなかなかそうも言ってられない。

 

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ブラガイに行った時に鮮明に覚えているのが、あるピザ屋に入ったこと。確かバスが全然ないとかで、モスタル方面に歩いて幹線道路でタクシーを拾おうとした道中に適当に入ったお店だったと思う。なぜそんなに覚えているのか、というと、ピザのサイズが異様に大きかったことと、アジア人が珍しいのか、お店の人に写真を撮られて「お店のFacebookに載せていい?」と聞かれてオッケーしたら、実際にFacebookページに自分の写真が載ってたことが大きい。その時はまだ改装直後で、比較的新しかったと思う。正直大きなピザを食べるモチベーションはあまりなかったが、ピザ屋には寄りたいなと思っていた。

記憶を頼りにピザ屋を探すためにブラガイの滝を後にする。幸い滝からは一本道なので、そこを降りていけばあるはずだ。歩くこと30分、お店を見つけた。店内が暗いのでやってないかと思ったものの無事開いてて安心した。以前と同じ席に座り、ピザのJumboサイズを頼んで友達とシェアする。見覚えのある、とにかくでかいピザが来た。

会計の時に、店主のおばちゃんに「4年前に来たんだよ」と言っても英語が通じてないのかあまりピンと来てない感じだったので、Facebookの写真を見せて「これ俺」って伝えたら、無愛想な表情が一気にほぐれて「あー貴方ね!覚えてるわよ!」と言った感じで言ってくれた。ニコニコしながらそのことを同僚の人にも伝えているようだった。

東欧の人は比較的無愛想な人が多い気がする。けどそれは単に言語の障壁があるというのが問題になっているだけで、基本的には親切な人が多いなと思う。「チャイナ」と声をかけられたり吊り目のジェスチャーをされたり、ということもあるけど、そんなのがどうでも良くなるくらいピザ屋のおばちゃんの笑顔に救われた気がする。ブラガイやモスタルに、というよりかはこのピザ屋にまた来たいと切に思う。

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モスタルで食べたピザ。

 

なんとかバスに乗りモスタル市街まで帰ってきて、チェックインを済ませる。

 

ここまではある程度決めていたが、ここからは全てが未定だった。8日後にマケドニアスコピエからオランダに飛行機で帰ることしか決まっていない。モスタルから比較的近くで有名な観光地である、クロアチアドゥブロヴニクが第一候補だった。

7時のドゥブロヴニク行きがある、と時刻表には書いてあったものの調べてみると出てこないのでバスステーションに行って直接買うことにした。

チケットカウンターで「明日のドブロブニク行きのバスはあるか?」と聞くと、"No Dubrovnik tomorrow"と言われた。理由は知らないが、明日はとにかくないらしい。別のバス会社にも問い合わせたもののなかった。

モスタルに一泊するのはスケジュール的にもあまり好ましくない。そもそも、モスタルにもう一泊してもやる事がない。

ダメ元で、モンテネグロの港町、コトルまで行くバスがあるかを聞いてみた。ダメ元というのは、駅の時刻表にもネットの予約サイトにも情報がなかったからだ。そうすると、"Kotor, yes!"と言われ、9時半モスタル発のバスチケットを購入。これで予定を崩す事なく進める。

 

ただここでまた新たな問題が生じる。先日ロックダウンを決めたオランダが、渡航制限を大幅に強化したことが発表された。

自分の場合ワクチンも打っているしオランダの居住者なので入国は出来るが、旅行途中に通るモンテネグロが「非常にハイリスクな国」に指定されていた。非常にハイリスクな国から渡航する場合、従来の検疫ルールだと「PCRまたは抗原検査の陰性証明書の提示が義務」だった。これならまだいい。問題は、このルールがさらに強化されて、「非常にハイリスクな国から帰国する場合はワクチン接種の有無に関わらず自己隔離が義務」というルールに変わった。

帰国便の出る北マケドニアは非常にハイリスクな国ではないものの、シェンゲン協定外なのでオランダに着いた際にパスポートをチェックされる。この時にモンテネグロ渡航スタンプを見られると自己隔離になる可能性が高く、これは避けたい。ではどうするか。というと、オランダにシェンゲン協定加盟国から入れば良い。

北マケドニアから南に行くとギリシャという国がある。ここはシェンゲン協定内の国だ。

なので、ギリシャでパスポートコントロールを済ませて、そこからオランダに帰国すれば隔離の必要なく帰れることになる。という事で、テッサロニキからデュッセルドルフに帰る便を急遽予約した。

 

これで旅行が無事続けられる目処はある程度ついた。この日はモスタル市内でボスニア料理を堪能して、次の日に備えて寝た。

 

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モスタルの夜景。いつ見ても綺麗だ。