備忘録

書きたいことや思ったことの殴り書き。

アフリカ旅行記-タンザニア③

モシでの最悪のスタートの後はというと、モシに住んでる友達と会い美味いローカル飯を見つけ、キリマンジャロコーヒーを飲み、そしてサファリツアーを満喫し、とかなりの巻き返しを図った。

 

そして今はザンジバルに来た。陸路旅を貫くならモシから鉄道でダルエスサラームへ、そしてそこからフェリーだったのだけど、今後の日程と疲労を考慮して飛行機で行くことにした。

元々旅を始めた時点ではザンジバルに行く気はあまりなかったのだけれど、あまりにも色んな人に勧められるので行くことにした。ただその代わり、ザンジバルがどんなところなのかとかは一切調べていない。

 

というわけでザンジバル空港に降り立ち、まずは中心地らしいストーンタウンを目指す。空港内にはミニバスは停まっておらず、またタクシーを見つけようとするとどうやらかなり取られそうだったので、客引きを振り切って空港外に出る。バイクタクシーを探す間もなく向こうから声をかけてくる。向こうの言い値も悪くはなかったので、バイクに乗って中心を目指す。

道中、あたりを見渡してみる。もう辺りもすっかり暗くなっているので全容がわかるわけではないけど、歩道も含めて道がしっかり舗装されている以外は今のところはタンザニアの他の街と変わらない。

が、ストーンタウンに着いた瞬間、まるで別の大陸に迷い込んだのではないかと思うような錯覚に陥った。白っぽい家が連なって出来た迷路のような路地は、北アフリカや地中海沿い、中東のそれを思い出す。アラブ諸国と交流があったという数少ないザンジバルに関する知識と景色がリンクする。

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目星をつけていたホステルのうち、よりセキュリティ等がしっかりしてそうなホステルにチェックインをする。思えば朝ごはんを食べて以降ほとんど何も口にしていなかったので、夜ご飯を食べに行く。ホステルのレセプションで「ローカルなレストランを教えてほしい」と伝えておすすめを聞いて、そこを目指す。

入るや否や見える白人旅行客の多さを見て少し後悔したが、もう空腹で他をあたる元気がなかったのでとりあえず入る。ライス、野菜、肉の王道セットを頼んだが普通のお店で頼むより2倍ほど高くて味は普通。まあなんというか、「ローカルなご飯が食べれる観光客向けのお店」だった。

レセプションの彼は「本当にローカルなお店なんて紹介しても観光客は喜ばない」と思ったのか、「ローカルのお店を教えたくない」と思ったのか、「ローカルのお店はそもそも名前とかもなかったりするから教えづらい」と思ったのか。まあいずれにせよ、美味いものは自分の嗅覚を信じて探すしかない。

 

その日はそのまま眠りにつき、次の日、豪雨の音で起きる。自分のベッドのすぐそばにエアコンがあって、これもまあうるさいのだけれど、明らかにそれとは違う雨音が外に響いている。ザンジバルに来て豪雨なんて聞いてない…。幸い通り雨だったので、1時間ほど待ってから外に出る。

 

改めて日中にザンジバルのストーンタウンを見ると、やっぱりアフリカからどこか遠くに来たような感覚に陥る。白を基調とした家と青空のコントラストは地中海や中東を想起させるし、そこにいる人々も今までとは少し違う。観光客の割合も多いし、アラブ系の顔立ちをしたタンザニア人も多い。雨が降った後で湿っぽい空気から独特の匂いがして、それでやっとアフリカにいることを思い出す。ストーンタウンをしばらく歩いてたどり着いた市場は観光客に向けたスパイスなども置いてあるものの、人口密度やそれによる喧噪、精肉店からする血なまぐささはアフリカ大陸で見てきたそれと変わらない。



ザンジバル、特にストーンタウンの周りは観光業を生業にしている人がとても多い。「ニーハオ!」という声のかけられ方も普段ならあまり気にならないけれど、「どうせこれからお金の話が始まるんだろうな」と思うとどうも返事をする気になれない。モシでの一件以来、かなりコミュニケーションに神経質になっているのもあるけれど。個人的にはただただ挨拶をしたいだけの―ルワンダカメルーンでかけられたような―「ニーハオ!」や"Chinois!"といった掛け声に関してはあまり嫌な気はしないので極力返すようにしていた。彼らは自分のことをただ珍しいから声をかけているだけで、なんて声をかければいいかわからない結果のその挨拶だと感じるから。ただ一方で、商売客に対して一律で「ニーハオ!」と声をかけるのが得策だとはどうも思えないし、面倒くさくなって無視してしまう。

 

あまりにも観光観光しているとそれはそれで疲れてしまうし、自分は別にそれを見にアフリカに来たわけではない。スパイス農園に見学に行ったときに「この島ではジンジャーティーやコーヒーにスパイスを入れるのが定番です」と言われたけれど、実際にそういったお店を探そうとすると大抵欧米の観光客向けのカフェにぶち当たるが、それは自分が探しているお店ではない。

とはいえ観光業を営んでいる人は現地の人たちで、彼らが集まる場所は絶対にあるはず、そう思って街歩きを続けていると、大きな樹の下でおじさんたちが集まっている場所にたどり着いた。

木を取り囲んでいる石造りのベンチのようなところに、油性ペンで盤を書き、ペットボトルのふたを使ってチェッカーを遊んでいた。まじまじと見ていると、向こうからしてもおじさんたちの遊びをまじまじ見てるアジア人が面白かったのか、「お前も参加しろ」といった感じで参加する。こういった場では「ニーハオ」などの声かけをされるわけでもなく、早口のスワヒリ語でまくしたてられるので、スワヒリ語が理解できない自分としては雰囲気で察する以外方法はない。けれど、こっちのほうが居心地はよい。結局チェッカーは序盤は優勢だったものの、途中から細かいルールが曖昧になって試し試しやっていたら形成を逆転され負けてしまった。ちょっと悔しかったけど、がっちり握手。

そしてその樹の横ではおじさんがコーヒーとジンジャーティーを売っていた。エスプレッソのような小さなカップだと10円、もう少し大きめの紙カップだと30円という破格の安さ。陶器で飲む方が風情があると思ったので10円のジンジャーティーを飲む。

ここでいうジンジャーティーは、ショウガをパウダーにしたものに水を注ぎ、そこに大量の砂糖を入れたもの。ショウガの辛さと砂糖の甘さが絶妙なバランスでとにかくおいしい。10円のジンジャーティーと無料のボードゲームが広がる空間では誰も自分のことを気にかけておらず、それがかえって心地が良い。

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ここからは完全に感覚をつかんだようにローカルなものを楽しめた気がする。その日の夜に見つけた露店で食べたオロジョというスープ。ライムとザンジバルのスパイスをベースにしたスープで、その中に生野菜、ジャガイモ、肉、肉団子が入っている。露店で買って、露店の前に置いてある木のベンチで並んで食べる方式。その酸味は食べたことのない味だったので一口食べて「めちゃくちゃうまい!」となる感じではないのだけれど、それでも癖になる味で、ザンジバルを離れて1週間した今もうすでにこの味が恋しくなっている。価格も120円ってお手頃。

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次の日にたどり着いたローカルな食堂で出てきた牛肉のトマトベースの煮込みは、声が出るレベルのおいしさだった。アフリカでは時折びっくりするくらい美味しいご飯が食堂とかで出てくるのが面白い。

 

最終日、ザンジバルからダルエスサラームに向かうための船に乗るまで、ストーンタウンの中心にある小さな広場で本を読みながら時間をつぶす。ここの小さな広場にもコーヒーとジンジャーティーを入れているお爺さんがいるので、今回はコーヒーをもらう。同じく10円ほど。なんてことのないコーヒーだけれど美味しい。そしてここでも例の如くだれも話しかけてこない。話しかけてくるとしたらそれはスワヒリ語だし、お金の匂いがしないただの挨拶だ。こういう場所にいると心地が良いし、少しすさんでいた心が浄化されていく。

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スパイス農園もプリズンアイランドも行ったけれど、ザンジバルで一番心地が良かったのはこういった空間だったように思う。そして観光客として扱われる頻度が高いからこそ、このコントラストのようなものがより一層心地よく感じられたのだろうなと。