備忘録

書きたいことや思ったことの殴り書き。

アフリカ旅行記-マラウイ①

川を渡ってマラウイ側のボーダーオフィスへと行く。行く途中に「ビザ用の写真のコピーを取るならここでとれるよ」と若い男に言われ、値段もそこそこだったのでお願いすることにしてオフィスに行く。が、なかなかプリンターが作動しない。そしてプリンターの起動に手間取っている間に「いや待てよ、マラウイのビザって写真載ってないしコピーいらないのでは?」と思い、「やっぱ大丈夫!」と断りを入れてボーダーオフィスに向かう。

ボーダーオフィスで女性の入国審査官にビザを申請したい旨を伝えると、「なぜ電子ビザで申請しなかったのだ」と詰められる。電子ビザのシステムが陸路入国に対応してなかったり、ホストからのカバーレターが必要だったけどそんなもの用意しようがなかったり、と理由が説明ができないこともないけれど、マラウイ側は「事前に電子ビザを申請して来い」とはっきりとスタンスを示しているので向こうの言い分も尤も。

とはいえここで食い下がってはどうしようもないので、「理由はちゃんと説明できるから時間をくれ」というと、別室に連れていかれる。別室にはいかにも、な大柄の男上司が足を組んで座っていた。再び「なぜ電子ビザを申請しなかったのだ」と言われたので理由を一から説明する。そうすると「マラウイに知り合いがいないのであれば『私自身が私をホストします』と書いて自署を載せればよいだろう、なぜわからないのか」と言われて頭の中にはてなが並ぶ。賄賂を請求されるかなと思いびくびくしていたけれど、「電子ビザを今申請してくれたらここですぐ処理してビザを発行するから、とにかくまずはネットで申請してくれ」という極めて普通の指示をされて安心する。

幸いタンザニア側からのネットが使えること、パソコンを持っているので自署つきのカバーレターをすぐに作れることもあって、30分ほどで申請を済ませ、男上司に伝える。そうすると「これから昼休みだからそれが終わったら処理するからしばらく待って」と言われ、部屋を後にして固い木のベンチで横になる。こっちも昼食を食べたいところだけれど、国境の間にいる自分がありつけるご飯などありもしないので、横になって休むほかない。

1時間ほどして、ビザが承認されたという旨のメールが届き安堵する。そのメールをもって再び入国審査に行くと、「このPDFをプリントしろ」と言われる。朝からスイカ以外食べてないのでこういった些細なやり取りでもストレスが溜まる。仕方なく最初に行ったプリンターのあるオフィスに行って「これ印刷してほしいのだけれど」と頼むと、年配の職員があっさりと、しかも無料で印刷させてくれた。どうやら若い男はそこの職員を装ってお金を取ろうとしているだけだった。

紙に印刷したビザの承認確認書を提出して、晴れてマラウイ入国。

 

アフリカ縦断をする旅行者の多くは、東アフリカを回った後タンザニアからマラウイに行かずにザンビアに行く。これはビクトリアの滝や、ナミブ砂漠等、タンザニア以南の著名な観光地が徐々に西に寄っていることが主な理由だと思う。

自分が今回マラウイに行ったのは、大学院の時の友達がマラウイの小さな町でデータ集めをしているから。たったそれだけなのだけれど、やはり普段10000キロ以上離れたところにいる友達がたった1000キロ以内、それもちょっと足を延ばせば会える距離にいるなら会いに行かない選択肢はない。

ということでマラウイ側に入ったけど、びっくりするくらい道以外なんもない。これ、ミニバス拾えるのか?とか考えつつ、かといって立ち止まっても仕方がないのでとりあえず一本道を歩いていく。

10分ほど歩くと、集落とも言えないくらいの家が何件か並んだところにたどり着き、そこで何人かの男が「カロンガに行くか?」と声をかけてきた。が、今まで乗ってきたようなミニバスは見当たらない。どうやら普通の乗用車に人を集めてそれでカロンガまで行くそうだ。今回の最終目的地はムチンジというザンビアとの国境沿いにあるマラウイ南西部の町。自分が今いるのがマラウイの北端なので、まずは北部の比較的大きな都市であるカロンガまで行き、そこからムズズ、カスングとミニバスを乗り継いでムチンジまで行く予定だ。なのでカロンガまで行けるというのは悪くない。

最初4000クワチャといわれたのが2500クワチャ(400円ほど)まで下がり、感覚としてそこまで悪くないのでタンザニア側で両替したクワチャを使い、カロンガへと向かう車に乗り満員になるまで発車を待つ。待っている間に「Hey my friend!どこから来たの?日本?Oh my god, 番号交換しようよ。君は友達だから僕のために日本に帰ったらギフトを送ってよ!」と友達になった覚えもない知らない人に絡まれる。何度も書くけれど朝からスイカしか食べていないのでそんな面倒くさい相手と会話するエネルギーはさらさら残っておらず、適当にあしらってると「僕はアフリカ人、君はムズング(白人)、友達なんかじゃないよ」と言われて立ち去って行った。状況が状況なら1日くらい考えてしまいそうな言葉を浴びせられたけれど、だいぶ無茶苦茶な言い分なのでスルーする。

車はというとトヨタの普通の7人乗りの乗用車だったけれど、車内には9人が乗り込み、そしてその隙間という隙間に荷物を詰め込むという豪快さ。乗用車の助手席なら比較的広めに使えるかと思いきや、助手席と運転席の間にも人が座っていて狼狽えた。

 

カロンガまでの道中でチヌア・アチェベの『崩れゆく絆』を読む。恥ずかしながらアフリカ文学の父と呼ばれている彼の代表作を知らなかったのだけれど、これも友人の勧めで読むことに。純文学を読むのは久しぶりだったから読み切れるか不安だったけれど存外に面白くて1日で読み終えてしまった。そして当たり前と言えば当たり前なのだけれど、昔のアフリカの生活を事細かに描写しているために農業の描写が多い。そこからはIntercroppingが行われていたり、昔から雨季の始まりを読み誤って不作になってしまったりする事象があることが見て取れる。アフリカの農業に携わるものとしては伝統的な農業だったりをある程度リスペクトする必要があると思っていて、そういった知見を得るためのアフリカ文学、というのは結構新鮮な発見だったように思う。

 

1時間ほどで北部の街、カロンガへと着く。地図で見た時は街だと思ったけれど、それを街と呼んでいいのかどうか迷うくらいには小さな「街」だった。今日はここからさらにミニバスに4時間ほど乗ってマラウイ中部のムズズまで行ければ百点満点だ。この時点で15時なので全然無理な話ではない。とはいえ、マラウイの通貨であるクワチャを持っておらず、ネットも開通してないし、なにより空腹がものすごいので、それらを解決してから向かうことにする。まずは銀行へ行ってお金を手に入れる。ATMか両替か選べるのだけれど、そろそろ旅が終盤に差し掛かってきているなかで結構な額のユーロ紙幣が余っていたのでこれを両替することに。適当な銀行で50ユーロを両替すると、公的レートだと50000クワチャほどもらえるはずのところが何と64000クワチャももらえた。理由は聞かなかったけれど、アフリカではこういった紙幣からの両替のほうがレートが異常に良い、みたいなことがあるということは耳にはさんだことがある。マラウイはそんな国の1つなのかも。そして何気なく両替を担当してくれたおじさんに「ムチンジに行く予定で、今日はムズズまで行く予定なんだよね」と話すと、「ここからリロングウェまで夜行バスが出ているから、ムズズまで行くのはやめて夜行バスに乗ったほうが早く着くよ」と思わぬ情報を教えてくれた。ムズズまでミニバスで行くとその日はそこで移動をやめなければならないし、また着いてから宿を探したりもしないといけない。そしてムチンジに着くのは早くとも翌日の夜だ。夜行バスに乗れば宿の心配はいらないし、翌日の午前中には確実にムチンジについているはずだ。気持ち的には一刻も早くムチンジに着きたかったので、夜行バスを探すことにする。

カロンガからムチンジまでは何社かバスを出しているが、夜行バスを出している会社は少数で、小さなバスターミナルで夜行バスを運行している会社を見つけて値段も悪くなかったためそこのバスに乗ることを決める。

f:id:kerompa-tokyo:20221017180903j:image

慣れた手順でSIMカードを契約して、やっと次なる目的の食事処を探す。この時点で16時、タンザニア時間では17時なのでもう1日ほとんど何も口にしていないことになる。旅をしていると徐々に燃費が良くなっていく―少ない食事で長時間行動できるようになる―が、それでも身体がエネルギーを求めているのをかなり感じる。

すこし町を歩いてみるものの基本的にはフライドポテトばかり売っていて、これは正直食べ飽きていたので、結局バスターミナルに隣接した食堂に落ち着いた。

何も言わずに待っていると、トウモロコシから作られたシマという主食とビーフシチュー、豆の煮込み、そして野菜のプレートが出てくる。後々わかるがマラウイといえばこれ、というくらい定番のセットだ。味は特段これといって特別なこともないのだけれど美味い。そしてシマがとにかく腹に溜まるので、夕方に食べたその日初めての食事だというのに「今日はこれでいいかな」と思うくらい満腹になった。

f:id:kerompa-tokyo:20221017180823j:image

ご飯を食べ終わってしばらく食堂で時間をつぶしていると物乞いの人に「お金をくれ」と言われる。カロンガは田舎町といった感じで極めて牧歌的・平和な雰囲気が漂っている一方でこういった物乞いは明らかに他の国で行った街に比べて多い気がする。この日だけでも3回ほどあったし、国境近くで車に乗ってたら絡んできた人もとらえ方によったら物乞いのようなものだ。最貧国の一つともいわれるマラウイに来たから、と短絡的に結びつけたくはないけれど、いやでもそういった考えがよぎってしまう。今までの国でも物乞いは見たのだけれど、物乞いといっても少し雰囲気が異なっているように思う。

 

夜行バスに乗るために6時にはバスターミナルに居て、と言われたものの、バスターミナルにバスが来たのは7時、発車したのは8時過ぎだった。まあアフリカだとさほど珍しいことでもないのでストレスももはや溜まらない。バスは新幹線のような5列シートであることを除けば普通のバスだった。可もなく不可もなく。ただ大柄な人が多いという土地柄、自分の座れるスペースは必然的に狭くなってしまう。そしてありとあらゆる荷物が通路に置かれて、そのなかには煮干しの入った麻袋とかがあるもんだからバス内は煮干しの匂いが充満していた。

ふいに奥歯が痛み出す。虫歯とは違った痛みでこれまでにも経験したことのある痛みだけれど、多分疲労からくるものだろう。思えばこの2日間はとにかく座って移動しかしていない。どうすることもできないので眠りに就こうとする。やっと寝れたと思うと、肩を叩かれて起こされる。服装を見るに軍隊か警察で、パスポートを見せろとのこと。パスポートとマラウイのビザを見せると何かを言われるでもなく解放されるのだけれど、これが結局1回の乗車で6回ほどあり、ろくに寝れなかった。そして起こされるたびに奥歯の痛みを自覚する。

午前2時くらいに最後に起こされてからは比較的深い眠りに就け、次に起きた時にはリロングウェの目前、太陽も昇っていた。幸いなことに奥歯の痛みも心なしか軽減されているように感じた。

リロングウェの街に入る。高層ビルのようなものはあまり見えず、基本的にはそこまで栄えている印象は受けない。まあマラウイ最大の都市はここからさらに200キロほど下ったブランタイアという街なので仕方ないといえば仕方ないかもしれないけれど。

急にごちゃごちゃとした雰囲気になっていき、その先にバスターミナルがある。バスターミナルというよりかはマーケットのなかにある駐車場といった感じだけれども。目的地、ムチンジまでもう一息。2日間移動してきたけれど身体も気持ちも楽になっていくのを感じる。